カリンバあれこれ

2001.11.15.
2003.06.25.更新

はじめに:

ロビンさんのカリンバワークショップで聞かせていただいた講義、アフリカの各地で集めて来られたカリンバの国名を基本において書いています。カリンバという楽器を理解するには、アフリカの地理的特徴を理解しなければ名前一つとっても、混乱がおこります。一つの国だけでもたくさんの言語があり、共通言語がないため、幾百もの名前が確認されています。そのため、このサイトでは便宜的にすべてをカリンバと呼んでいます。しかし、共通した特徴があるので、一応定義づけしておきます。

カリンバの定義:共鳴箱の上に鋼の棒(キイと呼ぶ)が並んでいる。
          キイの本数、並び方、共鳴箱の材料、形は様々である。
          左右の親指で弾く。

xxxxxx手で持っているところ xxxxxxカリンバの写真xxxxxx

目次:

  1. 手持ちの資料を調べる
  2. カリンバの名前の違いは使っている地域の言語の違い
  3. 一人で弾く楽器。自分で歌うこともある
  4. 左右の親指で弾く。まれに右の人差し指も使う
  5. 演奏形態
  6. カリンバの音階とキイの数
  7. 即興的に演奏する
  8. 雑音は必須条件
  9. 太鼓とカリンバを一緒には演奏しない
  10. あとは好きな音で楽しんでください
  11. ヒュー・トレイシーの作ったカリンバについて

1.手持ちの資料を調べる

◆打楽器事典:音楽之友社(「サンザ」で説明が載っています。)

◆民族楽器をつくる:関根秀樹著
ロビンさんの「しあわせのこばこ」より
  (チコ注:ロビンさんは100以上の名前を確認しておられます。)


2.カリンバの名前の違いは使っている言語の違い

アフリカはまず、大きい大陸だということを頭に置いておかなければなりません。私たちはよく「アフリカの人」「アフリカでは・・・」などまるで一つの国のことを話すような調子でものを言ってしまいますが、それは例えれば、「アジアの人」「アジアでは・・・」と言っているのと同じで、アジアでも日本とインドでは文化や言語がまるで違います。それと同じで広いアフリカを一括りで考えることが変だということです。カリンバが見られる国を地図の国名で表してみました。(ロビンさんがカリンバを買ってきた国です。)我々のように一つの国が同じ言語を使って生活しているとなかなかわからない感覚ですが、アフリカの一つの国で250もの言語があるところもあり、しかも、その距離は日本でいうと、隣の駅へ降りると、もう全然別の言語を使っており、全く通じないということがよくあるそうです。これがカリンバの名前が多くあるという意味です。そのため、学者が論文を書こうにも、統一された名前がなく困るそうです。

アフリカでカリンバが見られる地域の地図 カリンバが見られる地域

地図はこちらでいただいたものに手を加えました。
http://www.lib.utexas.edu/maps/africa.html
http://geography.about.com/library/blank/blxafrica.htm
3.カリンバは一人で弾く楽器

カリンバの共鳴用の穴は演奏者の方にあいており、自分が一番よく聞こえるようになっています。人に聞かせる為というより、自分が楽しむ楽器です。気が向いたら歌ったりもします。
アフリカの国でも大都市は世界の他の都市と変わらないようになり、都会の若者たちに人気があるのはギターだそうです。だからアフリカのある国へ行ってカリンバをこの目で見ようとすると、田舎へ行かなければなりません。田舎でおじいさんとかが弾いてたりするようです。とはいえ、日本の三味線よりはまだ、よく目にする光景らしいです。

特殊な例があります。霊感を持った特別な人物が結婚式などの祭典や、特別な目的で祈りを捧げたりする為に、『人の為に』演奏することがあります。こういうカリンバは人の形をしています。意味を知らないで触らない方がいいかもしれません。


4.左右の親指で弾く。まれに右の人差し指も使う

典型的なカリンバの形は木箱に、長さの違う鋼または竹の棒(以下キイと呼びます)が並んでいるものです。親指を箱の上に出して、キイを下へはじくようにして音を出します。形がユニークなものでは、ジンバブエのムビラが唯一2段に棒が並んでいます。ムビラは左に2段、右に1段あり、右の人差し指も使います。この場合は下からキイを跳ね上げます。また、ザウォセさんのイリンバのようにキイが60本もあるような大きな楽器で親指が届かない場合は、上から人差し指など何本かの指で押す時もあります。

タンザニアのカリンバ(典型的なタイプ)
4種類のカリンバ

タンザニアのザウォセさんのイリンバ
ザウォセさんのイリンバひもについている輪をイリンバの底にぶつけてコンコンとリズムを取ります。

ジンバブエのムビラ
ムビラ色々な角度の写真あります


5.演奏形態

ザウォセさんに習ったマンゴーさん ザウォセさんに習ったマンゴーさん

ムビラを弾くクマさんムビラを弾くクマさん


6.カリンバの音階とキイの数

典型的なカリンバでは、決められた音階はありません。弾く人がいいと思った音でいいのです。西洋音楽では1オクターブを12に分けた音を音階と決めていますが、本来の音には、西洋音階で半音と呼ばれている音の間にも音は無数にあります。それらの音の中で気持ちよく合う音を低い方から順番に並べたものが自分の音階になります。ただし、音の順番は決まっています。真ん中の一番長い音が低く、その音を基準に左右交互に音が高くなっていきます。キイの本数は決められておらず、4本のも60本のもあります。つまり、ギターは6絃、琴は13絃、ピアノは88鍵という風に決められていますが、そういう決まりはないという意味です。
しかし、特筆すべきカリンバもあります。
ジンバブエのムビラと、タンザニアのゴゴ人のザウォセ一家のイリンバには決まった音階と演奏方法があります。これらはカリンバ全体からみると特殊な部類です。音階と演奏方法を決めた偉大な音楽家がおり、それを伝えているからです。

音の高低順

本来のカリンバは1台、1台の音階が違っていますが、もし、何人かでカリンバを一緒に演奏したい時は、チューニングを合わせなければ演奏できません。そのチューニングは全く同じに合わせてしまうより、ハーモニーがきれいに合う程度のチューニングの方が、音に幅が出来、きれいな音楽ができます。1本くらいは、とんでもなく、変な音が混じっているのも、面白いですね。


7.即興的に演奏する

典型的なカリンバは、先に書いたように大人が自分の為に演奏を楽しむものなので、その日の気分で演奏が変わります。私たちが思い浮かべるような「さくら」「夏の思い出」「YESTERDAY」など、曲に題名がついていて、「あの曲を弾きたい」と思ったらいつでも同じメロディが出てくるというものではありません。個性によるパターンが似てることは言えますが。
しかし、ここでも、ジンバブエのムビラと、タンザニアのゴゴ人のザウォセ一家のイリンバには即興ではない音楽があるようです。これも偉大な音楽家の存在があったためです。

ジンバブエのムビラについては:
ようこそ蛸薬師倶楽部へ  by Yukio Akira
ムビラジャンクション  by kuma

タンザニアのイリンバ(ザウォセさん一家)については:
◆[http://member.nifty.ne.jp/ANAKAJIMA/kalinba.html]イリンバ  by 中島明夫(リンク切れ)
タンザニアの至宝フクウェ・ウビ・ザウォセ氏が2003年12月30日に亡くなられました。
http://jatatours.intafrica.com/arts.html

8.雑音は必須条件

キイに空き缶の切ったものを巻いたり、共鳴箱にビンの王冠をゆるめにつけたり、ジンバブエのムビラでは大きなひょうたんを半分に切ったもの(デゼという)の回りにビンの王冠をつけたりして、音の共鳴と共にザラザラとした雑音が入ります。日本の三味線のさわりと同じ効果を目的としています。

 空き缶を切って巻き付けている

ひょうたんにつけた王冠 ひょうたん(デゼ)につけた王冠


9.太鼓とカリンバを一緒には演奏しない

太鼓が見られる国とカリンバが見られる国とは地域が違います。太鼓は大きな音でリズムが激しいですが、カリンバは音も小さく、一緒に演奏すると、カリンバの音が聞こえなくなります。カリンバと一緒にリズムを取るには、シェカー類、シェケレなどが合います。日本人にはおなじみのマラカス、これは大陸が違いますが、この種類の楽器です。

シェケレを持ってないので、JUNJUNのサイトの写真を紹介します。
http://www.info-niigata.or.jp/~junjun/inst/skl/skl.html

アサラト アサラト


10.みなさん、好きなように楽しんでください

さて、日本でカリンバを愛好している方の中には、プロも含めて、沖縄の音階、ブルースの音階、日本の音階、西洋音階など、自分の使いやすいようにチューニングしておられます。また、自分で工夫して作っておられる方も多いです。本来のカリンバも、身近な材料で作り、自分の好きな音で楽しんでいるのですから、自分流で楽しめたらいいのです。

まつだモデル まつだモデル(ザウォセタイプ)


11.ヒュー・トレーシーの作ったカリンバ
ヒュー・トレーシー(HUGH TRACEY 1903-1977):イギリス系の南アフリカ人で、著名なアフリカ音楽研究家。1950年代にはアフリカ各地を旅行し、膨大な量の現地録音を行った。
ヒュー・トレーシーはカリンバのキイを西洋音楽の音階に調律し、カリンバには必須の雑音をなくした楽器を「カリンバ(KALIMBA)」という名前で売り出しました。楽器屋さんで売ってますよ。ここから、世界的に「カリンバ」という名前が定着していきました。アフリカの現地ではカリンバをどのように演奏しているか、という観点から見ると、西洋音階のカリンバはアフリカのカリンバではなく、西洋音楽の楽器だと言った方がいいでしょう。

ヒュー・トレーシーのカリンバ ヒュー・トレーシーのカリンバ

ヒュー・トレシーに関しては以下のサイトをご覧ください。

アフリカ音楽のフィールド・レコーディングの最高峰
HISTORICAL RECORDINGS BY HUGH TRACEY

http://www.ne.jp/asahi/fbeat/africa/02-topi/02021.html

ヒュー・トレイシーの設立したアフリカ音楽の研究所
ILAM (INTERNATIONAL LIBRARY OF AFRICAN MUSIC)

http://archive.ilam.ru.ac.za/home.asp


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